相続発生時に財産を争う「争族」になってしまうのは絶対に避けたい事態です。
争族を防ぐために自分が亡くなったあとの財産配分について遺言書を書いておくことが有効です。
自分は財産が多くないから関係ないと考えている方も多いかもしれません。しかし、年々相続財産の配分をめぐって起こる裁判は増えています。また、揉め事に発展する人は財産が多い人だけではありません。少しでも相続人間で争いが起こる可能性がある場合は遺言を作成した方がよいでしょう。当記事では揉めないための遺言の書き方と最低限確保するべき遺留分について解説します。
1.揉めないための遺言の書き方とは
財産の配分で揉めないためにはどのように遺言を書けばよいのでしょうか。揉めないための遺言の書き方を解説します。
(1)財産の内容と配分を明確にする
遺言を書く際は財産の内容と配分を明確にすることが大切です。財産については「自宅」など曖昧な書き方ではなく、登記簿を確認して地番や広さ等を記載することでどの不動産かを明確に記すことができます。不動産の記載方法についてはこちらの記事でくわしく解説しております⇒(③記事のリンクを貼る)。
配分についても明確に記しておく必要があります。金融資産などであれば、「長男Aに2分の1、次男Bに2分の1」などと誰が見てもわかるように明確にしておくとよいでしょう。
「長男Aと次男Bで仲良く分けてください」などの曖昧な書き方では、どのように分ければいいか分からないため、避けるべきです。
(2)予備的な内容も書いておくことや書き換えも視野に入れる
遺言は作成してから効力が発生するまで、長い時間が経過するケースも多くあります。そのため、あらゆる事態を想定して予備的な内容も書いておくことが重要です。
具体的には年齢が近い人が亡くなっていた場合の対処方法です。年が近い配偶者や兄弟姉妹が相続人である場合、遺言者よりも先に亡くなっていることも考えられます。
その際に亡くなった人が相続する予定であった分を誰が相続するべきかわからなくなってしまいますので、年齢が近い人が亡くなっていた場合、このように配分するということを書いておいた方がよいでしょう。
また、作成してから考え方が変わることも多くあります。遺言書の内容は定期的に見直しをして、考え方が変わった場合は書き換えることも検討する必要があります。
遺言は作成すると放置してしまいがちなので、誕生日や年末など年に一回確認する日を決めておくとよいでしょう。
(3)遺留分を確保する
遺言書を書いておくと法的に有効な財産配分となるため、基本的には遺言書通りに配分することになります。しかし、「遺留分」を侵害した場合、遺言通りに配分することにならない可能性がありますので注意が必要です。
遺留分とは民法で定められた最低限財産を相続する権利で、遺留分を侵害された相続人は遺留分に相当する金額を金銭で要求することができます。相続人別の法定相続割合と遺留分は以下の通りです。
【法定相続分と遺留分】
法定相続人 | 法定相続分 | 遺留分 | |
配偶者のみ | 1/1 | 1/2 | |
配偶者と子 | 配偶者 | 1/2 | 1/4 |
子(※) | 1/2 | 1/4 | |
配偶者と 親 | 配偶者 | 2/3 | 1/3 |
親(※) | 1/3 | 1/6 | |
配偶者と 兄弟姉妹 | 配偶者 | 3/4 | 1/2 |
兄弟姉妹(※) | 1/4 | 0 | |
子のみ | 1/1 | 1/2 | |
親のみ | 1/1 | 1/3 | |
兄弟姉妹のみ | 1/1 | 0 |
※複数いる場合は複数人の合計の割合
上記の表を見て、基本的に遺留分は最低限確保するように遺言を書くことが重要となります。ただし、相続人が遺留分を確実に要求してこない場合は、遺留分を侵害する遺言を書いても問題がありません。例えば、相続人が配偶者と親の場合、親が遺留分を請求してくる可能性は比較的低いといえるでしょう。
また、法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、遺留分がありません。法定相続人が配偶者と兄弟姉妹のケースでは全財産を配偶者に渡したいという意向の方も多いため、遺言を作成する代表的なケースです。このケースでは兄弟姉妹に遺留分はありませんので、全財産を配偶者に遺すという内容で作成しても問題ありません。
3.気持ちを伝える付言事項
遺言を作成する際にぜひ書いていただきたいのは「付言事項」です。
付言事項とは遺言書の最後に書き添えるメッセージです。付言事項に書く内容は法的な効力はありませんが、相続人に最後に伝えることができる大切なメッセージとなります。
付言事項に書いておいていただきたい内容は「感謝の気持ち」と「この配分とした理由」です。
法定相続人は遺言者にとって家族であり、色々と支えてもらっているはずですので、最後に感謝の気持ちを伝える必要があります。また、遺言を作成した際に色々悩みぬいて配分を決めたはずですので、その理由を相続人に説明するとよいでしょう。
場合によっては法定相続分よりも少ない財産配分になる相続人もいると思いますが、理由を添えることで相続人も納得してもらえる可能性が高くなります。
【遺言を作成するケース】
法定相続人:子ども二人
相続人の状況:長男A(子ども三人)
長女B(子ども一人)
遺言の内容:金融資産を長男Aに3/5、長女Bに2/5(不動産は無し)
上記の配分とした理由:子どもの教育費の負担を考え、子どもが三人いる長男に少し多くしたい
このようなケースでは以下のような付言事項を書くとよいでしょう。あくまで例文ですので、自分の気持ちをしっかりと伝えることが重要です。
【付言事項の例】
私が亡くなったあとの財産配分を明確にしたいと考え遺言を作成することにしました。
私の財産はAに3/5、Bに2/5で分けてもらいたいと思います。
このような配分にした理由はAの方は子どもが多く教育費の負担が多いだろうと考えたためです。
遺すことができる財産は決して多くはありませんが、有意義に使ってもらえればと思います。
最後になりますが、二人の子どもと四人の孫に恵まれて本当に幸せな人生を過ごすことができました。最後まで支えてくれてありがとう。
上記のように理由も添えて書いておくことで、相続する財産が法定相続分よりも少ないBも納得してくれる可能性が高くなります。
4.揉めないために遺言を書こう!
相続が原因で兄弟姉妹や甥・姪同士でトラブルになるケースが増えています。トラブルを避けるためには遺言を作成するのが最善の方法です。遺言を作成することで、トラブルを避けることができる可能性がかなり高くなります。
相続で揉めるケースは財産が多い人だけではありません、どんな人でも揉める可能性は0ではありませんので、遺言を作成しておくことをオススメします。
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