相続を検討するにあたって相続税が心配だと考える方は多いのではないでしょうか。今回は有効な相続税対策と注意点を解説します。
1.生命保険の非課税枠活用
相続税対策の中でももっとも気軽に行えるのが生命保険の非課税活用です。生命保険には法定相続人×500万円の非課税枠があります。例えば法定相続人が配偶者と子ども2人という場合の非課税枠は1,500万円(500万円×3人)です。
生命保険は銀行などの金融機関でも1時間〜2時間くらいの手続きで契約をすることができます。生命保険は簡単で確実に節税効果があります。
生命保険は様々なタイプの商品があります。円建てで定額の商品、外貨建ての商品、株や債券で生命保険会社が運用する変額の商品です。円建てで定額の商品は現在のような超低金利環境下ではほとんど増えることがありませんが、中途解約をせずに死亡するまで持ち続けた場合、運用によって元本が減ってしまうリスクはありません。
一方、外貨建ての商品や株や債券で運用する変額の商品は運用益が出る場合もありますが、元本を下回る可能性があります。
[注意点]
生命保険の注意点は解約した場合、元本割れとなる可能性が高いという点です。そのため、ご自身が生活する上で必要ないお金かどうか判断する必要があります。
そのためにはご自身の財産や毎月の生活資金、年金の受取額から考慮して自分自身がどれくらい必要かを判断して生命保険を契約する必要があります。
また、外貨建ての商品や株や債券で運用する商品は、死亡時の保険金が預け入れた元本よりも少なくなってしまう可能性もあります。それぞれの商品にメリットとデメリットがありますので、目的にあった商品を選択することが重要です。
2.生前贈与の活用
生前贈与とは相続が発生する前に相続人などに財産を渡しておくことで相続税の課税対象となる財産を減らしておく方法です。贈与には相続税対策に有効な特例もありますのでご紹介します。
(1)暦年贈与
暦年贈与は最も基本的な贈与の方法です。贈与税は年間の贈与額によって税額が決まりますが、年間110万円までであれば非課税で贈与することが可能です。
子ども2人に5年間110万円を贈与し続けた場合1,100万円を贈与によって課税対象となる財産を減らすことができます。また、暦年贈与は法定相続人以外にも贈与することができるため、子どもの配偶者や孫にも贈与をすることでより早いペースで課税対象財産を減らすことが可能です。
[注意点]
暦年贈与は相続によって財産を取得する人が贈与を受けていた場合、相続税発生前3年以内の贈与は相続税の課税対象に加算されます。そのため、亡くなる直前に贈与をしても効果はありません。暦年贈与で相続税対策を行う場合は時間がかかるということは理解しておく必要があります。
(2)住宅取得資金贈与の特例
住宅取得資金贈与の特例とは子どもなどに住宅取得資金用として贈与した場合、一定額まで贈与税が非課税になる制度です。
非課税となる上限金額は贈与する年によって異なりますが、令和3年度税制改正大綱によると令和3年4月〜12月31日に贈与をした場合、省エネ等住宅の場合1,500万円、省エネ等住宅以外の場合には1,000万円まで非課税で贈与をすることが可能です。
また、従来は住宅取得資金贈与の特例を利用する場合、住宅の床面積が50㎡以上に限定されていましたが、令和3年4月以降は40㎡まで引き下げられました。そのため、一人暮らしの方等の住宅取得資金にも利用しやすくなっています。
[注意点]
住宅資金贈与の特例は税務署長に申告を行うと必要があります。申告をしなければ贈与税がかかってしまうので忘れずに申告を行う必要があります。また、一度贈与した資金は基本的に返してもらうことができませんので、今後長生きして介護が必要になった場合なども検討して余裕資金で贈与する必要があります。
(3)配偶者への居住用財産贈与
配偶者への居住用財産贈与の特例により婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産を贈与する場合、2,000万円まで非課税で贈与する事が可能です。この特例は暦年贈与の110万円の非課税枠と併用することができますので、年間最大2,110万円までは非課税です。
配偶者へ居住用財産を贈与することで、メリットがでるのは夫婦間で財産の額に差がある場合です。ただし、同一夫婦間ではこの特例は一生に一度しか適用することができません。
[注意点]
夫婦間で同じくらい財産がある場合はこの特例を利用するメリットがありません。また、本特例を利用することで、贈与税は非課税となりますが、不動産取得税や登記費用等がかかるため、全く費用がかからず贈与できるわけではありません。諸費用と贈与によって得られる節税メリットどちらが大きいかよく検討して贈与を行う必要があります。
(4)教育資金贈与の特例
教育資金贈与の特例とは子や孫に贈与した場合1,500万円まで一括で贈与をしても非課税になる制度です。教育資金贈与は信託銀行などで信託契約を結びます。教育資金を利用する都度、領収書等を信託銀行経由で税務署に提出することにより、非課税で贈与された資金を利用することができます。教育資金贈与の特例を活用することで、相続税の課税対象財産を減らすことができます。
[注意点]
令和3年3月31日までの制度では、相続発生前3年以内の贈与に限り、使わずに残っている贈与資金に相続税がかかりました。つまり贈与者が贈与後3年超生存していれば、贈与資金が残っていても相続税はかかりませんでした。しかし、令和3年度税制大綱によると令和3年4月1日以降は贈与者の死亡の時期に関わらず、贈与資金の残額に相続税がかかることになります。そのため、特例を利用して贈与した後、贈与された資金をあまり使わないままに贈与者が亡くなってしまった場合、本特例によるメリットをあまり受けることができません。また、受贈者が孫の場合、相続税の2割加算の対象となりますので注意が必要です。
(5)結婚・子育て資金贈与
結婚・子育て資金贈与とは子や孫などに贈与した場合、最大1,000万円まで非課税となる制度です。利用用途は結婚する際の披露宴費用や出産に関する医療費、保育料等に限られます。
教育資金贈与の特例と同じように信託銀行と信託契約を結び、結婚・子育て費用に利用する都度領収書を信託銀行経由で税務署に提出し、非課税で利用することができます。
[注意点]
教育資金贈与の特例と同じく、贈与された資金を利用する前に贈与者が亡くなった場合相続税の課税対象となります。また、受贈者が孫の場合には相続税の2割加算の対象となります。
5.自分にあった対策を検討しよう
相続税対策にはさまざまな種類の相続税対策があります。相続税対策にはそれぞれの特徴と注意点がありますので、注意点もよく理解して行う必要があります。相続税対策を検討するうえでまずは分け方を整理するのもひとつの方法です。分け方を明確にしておくことで相続税対策も行いやすくなります。ご自身の考え方を整理して相続税対策を行うようにしましょう。 今回は生命保険の非課税枠と生前贈与について解説しました。次の記事では不動産と二次相続や一代飛ばしで孫に相続させる相続税対策について解説します。
Will Noteは、皆さんのご意見を基にこれからも進化していくシステムです。
プルダウン項目は、一般的な内容を載せておりますが、全てを網羅している訳ではありません。
また、特殊なケースではシステム対応できないこともありますが、ご意見ご要望等について、お問い合わせフォームから
ご連絡いただければ、可能な限り対応させて頂きたいと考えております。