2020年7月の民法改正により、自筆証書遺言の法務局保管制度が始まりました。
この制度により遺言を取り巻く環境はどのように変わっていくのでしょうか。
1.遺言の作成件数は増える可能性が高い
高齢化や終活ブームなどの影響もあり、遺言書の作成件数は年々増加傾向です。下記グラフをご確認ください。
【自筆証書遺言の検認件数】
【出典:司法統計年報】
自筆証書遺言の検認件数は増加傾向でこの傾向は今後も続くと言われています。この件数はあくまで家庭裁判所で検認された件数であり、実際にはもっと多くの自筆証書遺言が作成されていると思われます。 また、自筆証書遺言の法務局保管制度により、今まで遺言の作成を躊躇していた方も作成する人が増加すると思われます。
その理由は自筆証書遺言の法務局保管制度は自筆証書遺言のデメリットであった検認が不用となり、偽造や改ざん、紛失のリスクが無いと言う点です。また、公正証書よりも安価で作成できる点も大きなメリットと言えるでしょう。今後は自筆証書遺言の法務局保管制度によって自筆証書遺言の検認件数はさらに増加すると言われています。
自筆証書遺言の法務局保管制度についてはこちらの記事でくわしく解説しております。→記事リンク
2.自筆証書遺言の法務局保管制度利用の流れ
自筆証書遺言の法務局保管制度はメリットが多く是非利用したい制度です。制度を利用する場合、どのような流れで行えばよいのでしょうか。自筆証書遺言の法務局保管制度利用までの流れを解説します。
(1)自筆証書遺言を作成する
法務局に保管をする場合でも、まずは自筆証書遺言を作成します。遺言を法務局で保管してもらう場合でも法務局で作成してくれるわけではありません。あくまで遺言は自分で作成する必要があります。また、遺言の内容について法務局はチェックしてくれるわけではありませんので内容は不備がないように作成する必要があります。
(2)法務局で保管の申請をする
遺言を作成することができたら、次に法務局で保管の申請を行います。インターネットでも法務局の予約をすることが可能です。
https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/top/portal_initDisplay.action
遺言は基本的な住所地の最寄りの法務局を選ぶと良いでしょう。住所地以外では本籍地や不動産を所有している土地の近くの法務局を選択することも可能です。
保管の申請に行く際は申請書と顔写真付きの本人確認書類と本籍地の記載のある住民が必要です。申請書は法務省のHPからダウンロードすることができます。
法務省HP:http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00048.html
保管時に手数料として3,900円が必要となります。台紙に収入印紙を貼りつけて支払います。
(3)保管期間中
遺言の保管期間中は特にすることはありません。しかし、以下のような場合には対応が必要となります。
①内容を確認したい
遺言の内容を忘れてしまったなど、内容を確認したい場合は作成した遺言書を閲覧することが可能です。実際に遺言を保管した法務局では原本を確認することが可能です。他の法務局で閲覧を希望する場合、モニターで確認することができます。
遺言を閲覧する場合、原本の確認は1,700円、モニターでの確認は1,400円の手数料がかかります。閲覧には費用がかかってしまいますので、遺言書を法務局に保管する前にコピーをとっておくようにするとよいでしょう。
②遺言を撤回したい
遺言の内容を撤回したい場合は遺言の撤回書を作成し、法務局に事前予約のうえ提出する必要があります。
遺言の撤回書を提出すると保管した遺言が返却されます。遺言を撤回することに費用はかかりませんが、作成時に支払った費用は返却されません。遺言の内容を変更したい場合は、一度撤回をした後に新たに遺言を作成し、保管することになります。
③住所などの変更
法務局で遺言を保管した場合、住所や氏名などが変更となった場合、法務局に届け出る必要があります。住所氏名が変更となった場合は法務局に変更となった事項がわかるように戸籍謄本や本人確認書類を添付して変更届を法務局に提出します。変更届は郵送でも提出することが可能です。
④遺言者の相続発生後
遺言者に相続が発生した後は相続人等が法務局で保管されている自筆証書遺言を確認する必要があります。
自筆証書遺言が法務局で保管されているかわからない場合は法務局で被相続人の名前や住所、生年月日を伝えて検索することが可能です。また、自筆証書遺言では「検認」と言われる遺言の偽造等を防ぐ手続きが必要となりますが法務局で保管制度を利用している場合、検認は必要ありません。
3.自筆証書遺言を保管してもらう場合の注意点
自筆証書遺言を法務局で保管してもらう際にはどのような点に気をつければよいのでしょうか。注意点を確認しておきましょう。
(1)保管する前に遺言の内容はしっかり確認する
法務局の自筆証書遺言保管制度はあくまで遺言を「保管」するための制度です。遺言者が法的効力のある自筆証書遺言を作成することが大前提となります。自筆証書遺言には形式的な要件があり、不備があると無効になる場合もありますので、法務局に預ける前に内容に不備がないか必ず確認するようにしましょう。
(2)相続人に法務局で遺言を保管していることを伝えておく
相続が発生しても法務局が相続人に遺言があることを伝えてくれるわけではありません。
相続人が遺言の内容を実現するために、必ず自筆証書遺言が法務局で保管されていることを相続人に伝えるようにしましょう。
(3)考えが変わった場合は必ず撤回する
遺言は日付が最後のものが有効となります。考えが変わった場合は撤回しておかないと混乱が生じる可能性があります。
自宅で自筆証書遺言を保管している場合は手軽に破棄することができますが、法務局で保管している場合は手続きを経る必要があります。自宅で保管している場合と比べると撤回に手間がかかりますが、考えが変わった場合は必ず撤回をする必要があります。
4.法務局の保管制度を上手に活用しよう
自筆証書遺言の法務局保管制度は自筆証書遺言のデメリットを打ち消すことができており、使い勝手の良い制度です。今後は利用が拡大される可能性が高いでしょう。ただし、法務局の保管制度は内容についてはチェックされないなど注意点もありますので、制度の内容をよく理解して利用することが重要です。
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