2020年7月からの新しい制度!自筆証書遺言の法務局の保管制度とは?

2021/04/26 遺言

2020年7月からの民法改姓に伴い自筆証書遺言を法務局で保管することができるようになりました。法務局の保管制度とはどのような制度なのでしょうか。新しい制度である法務局の保管制度の概要とメリット・デメリットについて解説します。

1.法務局の自筆証書遺言の法務局保管制度とは

法務局の自筆証書遺言保管制度とは、どのような制度なのか解説します。
まず下表をご確認ください。

遺言はこれまで3つの作成方法で分類されていました。法務局の保管制度とは自筆証書遺言の中にもう一つの選択ができたとイメージすると良いでしょう。法務局の保管制度は自筆証書遺言ですが、従来の法務局保管制度未利用の自筆証書遺言と異なる点もあります。次に自筆証書遺言を法務局で保管する場合のメリットとデメリットについて解説していきます。

2.自筆証書遺言の法務局保管制度のメリット

自筆証書遺言の法務局保管制度にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

(1)検認が不用
自筆証書遺言の法務局保管制度のメリットの一つは検認が不用になるという点です。法務保管制度を利用しない自筆証書遺言は家庭裁判書での検認が必要でした。
検認とは自筆証書遺言の偽造や変造を防止するための手続きです。
自筆証書遺言を活用するためには遺言書に検認済証明書を添付する必要かがあります。しかし、検認が必要であるということを知らない相続人が検認を怠った場合、自筆証書遺言が無効となってしまうことがあります。法務局保管制度を利用することで検認が不用になるという点は、相続人の負担を減らすこともできるので、大きなメリットと言えるでしょう。

(2)偽造・改ざん・紛失のリスクが無い
自筆証書遺言の法務局保管制度では偽造・改ざん・紛失のリスクが無いという点が大きなメリットです。これまでは、自分で書いた自筆証書遺言を自宅等で保管することが多く、遺言書があることによって不利となる相続人が発見した場合、偽造や改ざんの恐れがありました。また、せっかく書いた遺言書をなくしたり、死後に発見されないということもありました。

しかし、新たな法務局保管制度を活用すればこのような心配はなくなります。

(3)遺言の検索ができる
法務局保管制度では、公正証書遺言と同じように相続人は自筆証書遺言を検索できるようになり、法務局に遺言書が保管されている場合にはその内容も確認できるようになります。遺言者の死後、相続人は遺言書の存在を知らなくても、法務局に保管された遺言書の有無は確認できますが、自筆証書遺言を作成し法務局に保管した場合は、その旨相続人に伝えておくと良いでしょう。

法務局での保管制度が始まったことにより自筆証書遺言が発見されないと言うデメリットは、解消されることになります。

3.自筆証書遺言の法務局保管制度のデメリット

メリットも大きい法務局保管制度ですが、以下のようなデメリットもあります。

(1)内容は確認してもらうことができない

法務局の保管制度では自筆で作成した遺言を保管してもらう制度ですので、内容について確認してもらえるわけではありません。公正証書遺言では公証役場の公証人が内容も確認するため、作成した時点で有効な遺言となります。法務局ではあくまで保管するだけで、チェック機能があるわけではありませんので、財産の記載方法や分け方など、内容もしっかり吟味して作成する必要があります。法務局に保管してもらうことで、有効な遺言になると勘違いしている方も多いのでこの点は注意が必要です。

(2)費用がかかる

法務局保管制度では法務局の保管に費用がかかります。ただし、保管費用は保管時の3,900円のみと非常に安価です。公正証書遺言を作成する際は内容にもよりますが、数万円かかることが多いので、法務局保管制度を利用する方が、公正証書遺言よりも安く作成することが可能です。

遺言作成の費用についてはこちらの記事で詳しく解説しておりますのでご確認ください。⇒記事リンク

(3)作成や書き換え時に法務局に出向く必要がある

自宅で気軽に作成や書き換えができると言う点も自筆証書遺言のメリットの一つです。法務局の保管制度では法務局に出向いて保管の手続を行う必要があります。本人が法務局に出向く必要がありますので、自宅の近くに法務局が無い方や、高齢で外出することが難しい方にとっては大きなハードルになることもあります。また、法務局で保管の手続をしてもらう際には顔写真付きの本人確認書類が必要です。

自筆証書遺言の保管をしてもらえる法務局はこちらで確認することができます⇒【HP差し替え掲示用】200623_遺言書保管所管轄一覧 (moj.go.jp)

(4)住所が変更した場合などは届け出る必要がある

法務局で自筆証書遺言を保管してもらう場合は、その後住所等が変更になった場合には法務局に届け出る必要があります。法務局に保管してもらうことでこのような手続きが発生してしまうことは一つのデメリットと言えるでしょう。

4.法務局保管制度は利用したほうがよい?

自筆証書遺言を作成した場合には法務局に保管した方がよいのでしょうか。結論から言うと法務局保管制度を利用するメリットは大きいと言えるでしょう。法務局の保管制度では、自筆証書遺言の大きなデメリットであると言われていた、偽造や改ざんのリスクを抑えることができます。

また、検認が不要となり、法務局で遺言の有無を検索することもできますので、遺された相続人にとってもメリットが大きいといえるでしょう。保管には費用がかかりますが、3,900円と非常に安価ですので、法務局の保管制度はぜひ活用したい制度です。

ただし、法務局に内容を確認してもらえるわけではないと言う点は注意が必要です。法務局に保管してもらっていても、内容がしっかりできていないと、遺言を作成した効果がありません。内容についてはしっかりと吟味して法務局で保管してもらうようにしましょう。

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